おじさん

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南田やその他のたまに来るアルバイトは、おじさんがミスをするたびにおれに報告した。 「あの新人」 大抵のアルバイトは、おじさんのことをそう呼んだ。 「わざとミスしてるようにしか思えないっす」 南田は案外世話焼きなのか、おじさんのことをいつも注意深く見ていた。耳のワイヤレスイヤホンも外した。おじさんに、「接客とは」と見せしめるかのように、淡白だった口調がにこやかで丁寧な対応になった。 「ありえなくないですか。ぼくだって『サラダ温めますか』なんて聞いたことないっすよ」 そしてついに、おじさんがやらかした。 「店長、ちょっと、これ見てくださいっす」 南田が、休憩室にいたおれを手招きして呼んだ。夜勤帯、おじさんは休みだった。 店内には、トラックから降りてきた運送屋が出入りしており、いそいそと何台もの台車を運び入れていた。台車の上には、何重にも積まれたコンテナーが高々とそびえている。 「なんだこれ、発注ミスか?」 おれは南田の方を振り返り、ぎらりとした目で見た。南田は胸の前で両手を振った。 「おれじゃないっす。あのおじさんっす」 「北谷さん……何をこんなに注文したんだ」 背の高い南田が、背伸びをして一番上のコンテナーから商品をつまんだ。うちのコンビニ独自の新商品、宇治抹茶のメロンパンだった。 「この3台は、全部メロンパン入ってまーす」 運送屋が何事もないように声を張り上げて、領収書にサインを求めた。心の奥底では、きっとくつくつと笑っている。注文通り持ってきただけですけど何か、という顔を貼り付けた運送屋からおれは冷静な仕草で領収書を受け取り、サインをすると丁寧に返した。 「あの業者、絶対楽しんでましたよね」 南田が小声でおれに言った。 「そりゃ、こんだけ同じものがあるとな……これをどうにかしよう」 おれは絶望的な気持ちでコンテナーを見上げた。 「あっ、いい考えがあるっす!」
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