月夜の小鳥は哀切な嘘をつく。1

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苛めっ子達が行ってしまったことにはホッとするが、憧れていた二海人と2人残されて、ドキドキがだんだん苦しくなってくる。 助けてくれたお礼を言いたいのに、何故か喉の奥が詰まって声が出ない。 「どうしたの? あいつら、もういないよ? 」 すると、いつまでも黙っている真祝を訝しがって二海人が顔を覗き込んできた。 ビクンと揺れる肩に二海人が驚いて、伸ばした手を引っ込める。 そして、困ったような表情で言った。 「ごめん。 もしかして、オレのこともこわい? 」 その言葉には、真祝の方が驚いてしまい、ぶんぶんと頭を振る。 「こわく……ない、よっ。 」 出た声が、自分で思ったよりも大きくて、真祝は思わず両手でくちを押さえた。 「ほんとう? なら、良かった。」 ははっと笑ってくれた二海人の顔が、優しくて、格好良くて、ぼうっとしてしまう。 このまま見詰めていたいが、しかし、真祝には確かめておかなければいけないことがあった。
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