月夜の小鳥は哀切な嘘をつく。1

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思いがけない提案は、真祝が望んだ以上のもので信じられない気持ちになった。 「うん、なる……っ 」 そう答えるのが、精一杯だった。しあわせで心が震えていた。 その場だけの言葉だとしても、きっと恨んだりはしなかっただろう。 しかし、実際に二海人は、言葉通りに真祝のことを隣においてくれた。 人気のある二海人を独占している真祝を面白く思わない子達も少なからずいたし、両親がともにα(アルファ)でαであることを有望視されていた二海人と、Ωである母を持つ真祝が釣り合わないことも知っていたけれど、陰口を叩かれても、誰に何を言われても、二海人が許してくれる限りこの場所を誰かに譲る気はなかった。 二海人も、そんなことは気にしないようで、いつも側にいて、真祝のことを優先し、尊重してくれていた。 だからといって、決して甘やかすようなことはしない。2人は《特別な友達》で対等だと態度で示してくれていた。 そんなところも、好きで堪らなかった。そう、好きで好きで仕方がなかった。 あの頃は幼くて、その感情の名前を分かっていなかったが、今ならばよく分かる。 自分はずっと恋をしていたのだ、あの全てにおいて清洌な少年に。 そして、少年は成長する。
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