月夜の小鳥は哀切な嘘をつく。1

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初めて真剣に告白したのは14歳の時。 学校で受けた、近く行なわれる性別検査の説明会での帰り道だった。 それまでにもずっと事あるごとに、冗談めかして「好き」とは言ってはいたが、自分が思うよりもずっと、性別での社会的地位の差があるという現実を知って焦ったのだ。 αは子どものうちから、有能さにおいて他の子と異なると言われている。 親の性別も大きく関係はしていたが、二海人は小さな頃から頭脳、体格は勿論、身体能力も高く、全てにおいてαの兆候を示していた。 それに比べて真祝は、相変わらず女の子のような顔、体つきは華奢で、自分と良く似ている母の性別のことも考えたら、間違いなくΩな気がしていた。その予感は残念なことに当たってしまうのだけれど。 今は二海人と同じ学校へ行きたくて、付いて行けるように頑張って勉強をしているが、もし本当に二海人がαであれば、努力ではどうにも出来ない壁が生じてしまう。 大抵の進学校では、普通科の他に、α専用のコースが設けられており、α性はそちらに通うことになっているからだ。 あれは、まだ暑さが残る残暑の夕方だった。 カナカナカナと、蜩が鳴いていた。 「二海人 」 顔を見ることが出来なくて、二海人の白いシャツの半袖からスラリと延びた、筋の浮かんだ腕を見つめながら名前を呼ぶ。
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