月夜の小鳥は哀切な嘘をつく。1

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小さな時からそうだ。 二海人は大抵のことでは自分が引いてくれるけれども、こうと決めたことには頑固で、真祝がどんなに怒っても宥めても譲らない。 二海人の言っていることも分かるが、こっちも、もしかしたら今までの様に側に居られなくなることも覚悟して、一大決心で告白したのに答えを先延ばしにされ、不完全燃焼で胸の奥で何かがぶすぶすと燻る。 「でもさ、二海人。 たぶん、僕の言うことは合ってると思うよ? 」 嘴みたいに尖らせた口に、二海人がぷっと吹いた。 目許に寄せたしわさえ格好良くて、ずるいなと思う。 こうやって、真祝に何も言えなくさせてしまうから。 「俺は、『たぶん』とか『もしも』とか、仮定の話は嫌いなんだよ。」 そう言うと二海人は、眼差しを真っ直ぐなものへと変えた。 「まほのことは、誰よりも大切だ。とても大事に思ってる。 それだけは確かだから。 」 その時の、熱を帯びた瞳を真祝は忘れられない。 諦められないのは、告白めいたこの言葉が忘れられないからだ。 例えそれが、友達へ向けられた言葉だったとしても。
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