月夜の小鳥は哀切な嘘をつく。1

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「仕事……、忙しいのにごめんね 」 早く仕事を終わらせてここに来てくれた二海人に謝ると、気にするなという様に、くしゃくしゃと頭を撫でてくれる。 二海人は、高校に進んだ後、この国で一番の最高学府に進み、世間一般でいう、所謂一流企業に就職した。 真祝は高校までは同じ学校に通えたが、結局は元々の実力不足もあり、大学は自分に見合ったところを受けて卒業はしたものの、性別とそれに伴う体質のせいで、今現在は契約社員の事務として働いている。 そんな真祝と違って、一線で働く二海人の仕事はとても忙しいのだろうと容易に想像はつく。 けれど二海人は、どんなに仕事が忙しくても、学生の時と変わらずに、真祝が苦しいときには必ず助けに来てくれた。 発情期の時も、いつもこうして様子を見にきてくれる。 「まほ、辛いか? 」 まるで、自分まで辛そうな表情に胸がきゅうっとなった。それと同時に気持ちがささくれ立つ。 真祝が、その辛さから開放して欲しいと望んでいるのは、二海人だけだと知っているくせに。 「……分かってんなら、抱いてよ 」 睨みながらそう言うと、冗談と取った二海人に額を叩かれた。
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