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「馬鹿野郎……、こんな時に何言ってんだ、よっ 」 膝裏に手が差し込まれ、ふわっと宙に身体が浮く。所謂、お姫さま抱っこに恥ずかしくなって、「まっ、待って。俺、重い…… 」と言えば、「そう思うんなら協力しろ 」と手をニ海人の首に回させられた。 「とにかく、俺の家に連れていくからな。話はそれからだ 」 見上げる横顔が本物のニ海人で、信じられなくて、それでも嬉しくて、力の入らない手で一生懸命に抱き付いた。 「本物、だ 」 「は? 」 「ニ海人、カッコいい…… 」 涙混じりの震える声でそう言うと、「……馬鹿か、お前は 」といつもの呆れた声で言われる。 真祝にとって、その言葉がまた嬉しかった。 ニ海人の部屋に着いて、ソファーの上に降ろされた真祝は、「風呂沸かすから、少し待ってろ 」と毛布を掛けられ、頭をポンポンとされた。 白いシャツの腕を捲りながら、浴室へ向かう後ろ姿を見送る。 ニ海人がバスタブを洗い、湯を溜める音を聞きながら、真祝はぽすんとソファーに横になった。身体がしんどくて、とても1人では支えて居られない。
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