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首を傾げる二海人に、「嘘だ!」と真祝が口を尖らせる。
「……嘘、俺に気ぃ使ってんでしょ? 」
「は? 俺がなんでお前に気を使わなきゃならないんだ? 」
「だって! ……二海人は、優しいから 」
優しいから……と、もう一度言うと、二海人がふっと口唇の片端を持ち上げる様に笑った。
「優しい……か 」
「二海人? 」
「そう思って貰えるなんて、ありがたいね 」
そう言うと、「よいしょ 」と荷物を持つみたいに、真祝を肩に担ぎ上げた。
「ちょっ、二海人っ 」
「お前、ぐだぐだ煩いから、とっとと風呂に連れていくことにする 」
「ぐだぐだって、うるさいって。なんだよ、それっ 」
「言葉通り、そのままだが? 」
しれっとのたまう二海人の背中を、真祝はぽかぽかと叩く。
「もう、さいてー! お前、最低だー! 俺はお前と違って、ちゃんと気ぃ使ってんだよ! 」
「分かった、分かった 」
あやすみたいな物言いが、また気持ちを逆撫でする。しかも、笑うのを堪えているのか、乗っけられている肩が小刻みに揺れているのが分かるから……。
「適当なこと言うな! もういいから、降ろせって! 」
「我慢すんな、歩けないくせに 」
「歩けますよーだ。だから、降ろせって! 着いちゃうだ…… 」「着いたぞ 」
言葉が重なって、トンと下に降ろされる。けれど、悔しいことに足に力が入らなくて、真祝はペタンと脱衣室の床に座り込んでしまった。
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