6.

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「ほら、みろ 」 二海人の腕にしがみ付く手が、ずるりと滑って離れる。 「まほは、自分のことなのに、自分を1番分かってないからな 」 「何だよ。じゃあ、二海人は俺のこと全部分かるっていうの? 」 言い返した真祝に、二海人が何か言いたそうな表情をした。けれど、それは一瞬で消え、代わりにその端正な顔に苦い微笑みを浮かべると、ぷくっと膨らんでいる真祝の頬を軽く摘まんだ。 「ちょっ……!」 「ばーか 」 思わず顔を背けてしまった真祝に、揶揄い混じりの声が聞こえる。反射的に、誤魔化されたのだと感じた。 「二、海人……ッ 」 そうはさせまいと名前を呼ぶが、「……これ、使えよ 」と、既に次の行動に移っていた二海人に、棚から取り出したバスタオルを渡される。 「あ、ありがと 」 「勝手は知ってるな? 何でも使っていいから 」 そう言って、そのまま脱衣室を出て行こうとするから、慌てて「行っちゃうの? 」と呼び止めた。「居て欲しいのか? 」と二海人が振り向きながら聞いてくる。 「うん…… 」 恥ずかしいけれどそうだと頷けば、「だが、そうもいかないだろう? 」とため息を吐かれた。その言葉に、ギクリとする。 まさか、知ってる……? 鼓動が早鐘のように打つ。まだ、まだ知られたくない。 すると、二海人が「そんな顔するな 」と、中腰になって頭に触れた。 「まだ飯を食っていないんだ、少しコンビニに行ってくる。まほは、何か欲しいものはあるか? 」 俯いたまま、ふるふると首を振ったら、「そうか 」と手の温もりが消える。 「すぐに帰ってくる。無理するなよ 」 もう、頷くことしか出来ない。 パタンと扉を閉める音と共に、「……匂いなんか、全くしねぇんだよ 」と苦し気に吐き捨てた二海人の声は、真祝には聞こえてはいなかった。
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