6.

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折角、二海人が浴槽に湯を張ってくれていたけれど、身体が怠くて、重くて、湯船には入れなかった。 汚れた身体は、どれだけ擦ってもキレイにならない気がしたのもある。 ぬめりとした舌に舐められ、乱暴な手にまさぐられた感触を思い出すと、悔しさと気持ち悪さにまた吐きそうになった。 「ちくしょ……っ 」 ぱしゃん……と、湯船を叩く。こんな状態でなかったら、あんなヤツにやられたりはしなかったのに。 身体を支えるために、浴槽の縁を掴んだ手が白くなる。 ふと、鏡に映る自分の姿が目に入り、ハッとして目を逸らす。 分かってる、本当はこんなこと大したことじゃないって。 特にうなじの赤い跡は、一生消えないと分かっていても、ひりひりと痛くなる程洗わずにはいられなかった。 浴室から出ると、新しい下着と見るからにサイズの違うスウェットが置いてあった。 下着はコンビニで買ってきてくれたものだろう。スウェットは二海人のものだ。
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