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見たことのあるグレーのスウェットを、まだ濡れたままの手で取り抱き締めると、柔軟剤の清潔な香りの中に、ふっと二海人の匂いがした。
たまらなく襲う、不安。
「……大丈夫、だよね 」
真祝はスウェットに顔を埋めた。
こんなに恋しい。切なくて、泣きたくなるくらいに好きだ。
だけど、自分の気持ちはずっと1つしかない筈なのに、どうしてこんなに曖昧な不穏感に心が騒ぐのだろう。
しんどさに、身体に力が入らない。甘い快楽を求めて、芯が疼く。
不安なのはきっと、通常より重い、この発情期の辛さのせいだ。それから……。
スウェットを、震える手で更にぎゅっと抱き締める。
頭では知っていた筈なのに、本当には分かっていなかった。昨夜その存在を嫌なくらいに教えられた、俺の中の『子宮』が種を求めている。
……怖い、と思った。
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