月夜の小鳥は哀切な嘘をつく。1

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「何度も言ってるだろう、こういうのはいつか出逢う《運命の番》様とやらにしてやれ 」 「そんなの都市伝説だよ。 それに、まだ出逢ってもいない《運命の番》なんかより、俺は二海人がいいって言ってんじゃん!」 「それも何度も言ったよな? お前は勘違いしてるだけだ。 発情期が苦しくて、安心出来る手近な男で済まそうとしてるだけだよ 」 優しい声が棘のように、心に突き刺さる。 この男は、こんなに泣きたくなるくらい好きな気持ちがまやかしだと言う。小さな頃から好きだったのだと言っても、それは友情だと言って聞き入れない。 「……じゃあ、それでもいいよ。 」 「は……? 」 「そう言うなら、今だけ、俺と後腐れないセックスしろよっ! どうせβとΩは番えないんだから……っ 」 身体を起こして、二海人に抱き付く。その反動で、2人してベッドに倒れ込む形となった。 「おい、まほっ?! 」 「どうせ、好きだって言ったって信じてもらえないんだから、カラダだけだっていい! 」 しがみ付いて、驚く二海人の顔を引き寄せる。 指に絡む短めで固い髪。 合わせて分かった少しかさついた口唇。 重なる重みに、身体の奥からあまい何かが込み上げて来た。  「ま … 」 離れようとする二海人に、嫌だともっと口唇を押し付ける。
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