6.

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俺の気持ちを無視してまで、他の男に押し付けるくらいに。 「居るんだろ、二海人っ! 答えろっ、答えろよっ! 」 部屋のドアに向けて、真祝は真っ直ぐに手を伸ばした。本当は助けて欲しい。こんなの、俺は嫌だ。嫌だ……っ! 「答えろーーーっ!! 」 けれど、手は虚空を掴むだけ。 ドアは開かず、しんとした部屋には、はぁはぁと自分の息遣いが響くだけだった。 ……分かってる、本当は助けになんて来てくれないこと。俺は捨てられたんだ。こんな裏切り方をされて、友達としても要らないって、捨てられた。 「可哀想だね、真祝さん 」 後ろから、央翔が流れる涙を掬うように、真祝の頬にちゅっとキスをする。央翔は、パタンと落ちた右手を引き寄せ、大きな手に包むとその手にも口付けた。 「俺が俺の全てを掛けて、貴方を愛してあげます。貴方の全部を愛します 」 止まらない涙は、赤い色をしていたのではないかと思う。 「……んなの、いらねぇよ 」 聞こえているのか、いないのか、央翔は長い指先で真祝の顎を掴むと、口唇を重ね合わせてきた。
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