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「そ、れは、柚井様は了承されておいでなので? 」
「了承もなにも、私達は〈運命の番〉だ 」
央翔の返答に、富樫がもう1度聞き返す。
「了承されたので? 」
「……そんなものは必要ない 」
富樫が大仰にため息を吐く。
「了承、されていらっしゃらないのですね 」
央翔は、その非難めいた問いに答えない。答えないのは無言の返事であり、肯定に外なら無かった。
「柚井様が京香様を助けて下さったあの日から、坊っちゃまが柚井様に傾注されているのは存じております。柚井様が坊っちゃまの運命の番だと云う事も。けれど…… 」
「富樫、黙れ。私に意見するのか? 」
言い募る富樫を、低い声で制止する。富樫は言葉を止め、少し肩を竦めると首を振った。
「坊っちゃま。私にとってあなたは、小さな頃から何の変わりもありませんよ 」
央翔と京香にとって、いつも仕事で飛び回っている父母の代わりに面倒をみてくれていた富樫は、親も同然だった。自分の前で体裁や威嚇は必要は無いと、案に告げる富樫に央翔はあっさりと白旗を上げる。
「俺は……、俺の伴侶は真祝さんしか考えていない。誰が何と言おうと結婚するつもりだ 」
「坊っちゃま…… 」
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