6.

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言いながら、富樫は腕に掛けていた央翔のビジネスバッグを受け取る。 「しっかりと柚井様だけを、離さずに抱き締めていてください。今は坊っちゃまのお心が通じていなくとも、いずれは受け入れて下さいます 」 背中を叩いて、中央の大階段から二階へと促す富樫は、「なぁに、時間はございますから 」とにこやかに笑った。 ******* 強い喉の渇きに気付いて、真祝は目覚めた 。まだ、辺りは暗い。自宅ではないふわふわの布団と枕に、ここはどこだろうと思いながら慣れない目で周りを見回すと、大きな窓の側に佇む背の高い人影を見付ける。 「く、が……?! 」 声を発して、それが酷く()れているのに驚く。 喉が痛くて咳き込む真祝に、月明かりを背にした央翔が駆け寄って来た。 「真祝さん! 大丈夫ですか?」
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