6.

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パシッ……。 部屋に乾いた音が、部屋に響いた。 「?!」 驚いた表情(かお)の央翔が、叩かれた手を自分に戻す。 「触、るな…… 」 思い出した、ここは久我の屋敷だ。この夜に起きた出来事を一気に思い出し、真祝はズキンと痛む蟀谷(こめかみ)を押さえた。 「……っ 」 「真祝さん……っ 」 心配そうに近付いた央翔に、「触るなって、言ってんだろ! 」と真祝が制す。けれど、央翔は構わずに真祝を抱き締めてきた。 「離せよ……っ 」 央翔が腕の中でもがく真祝に、「暴れないで 」と囁く。 「心配したんです、すごく 」 その柔らかい優しい声に、鼻の奥がツンと痛くなった。 「全部、お前のせい……だ 」 細く見えるくせに、思ったよりも逞しい胸を、効かないと分かっていながら(こぶし)で叩く。 「お前が、お前が俺の前に現れなきゃ、こんなことには…… 」
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