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勝手なことを言うなと、怒鳴り付けてやればいい。そう思ってる自分が居るのに、こんなにも真摯に心の内の全てを見せられれば、何も言えなくなってしまう。
……いや、そんなのは言い訳だ。だって、全部が嫌いだなんて嘘だ。初めから好きだったと言われて、コイツの番とのしての自分が、心の奥底で喜んでいる。愛する人から愛されなかった自分を、愛して欲しいと泣いている。
「 ……俺は、お前のこと愛してない 」
つぅ……っと、左の目から涙が頬を伝った。
「真祝、さん? 」
「でも、俺にはもう、何も無いんだ 。だから 」
そう、何もない。好きな人との未来も、好きな人の為に守るべき貞節も。
「お前のことは一生許さないけど、一緒に居てやってもいいよ、央翔 」
自分をこの世で一番欲しがっているのが、この男なのなら与えてやってもいいかと思った。それが、自分から全てを奪った男でも。
そうしなければ、何かに縋らなければ、もう、この場所に、この世界に、立っていることも出来ないだろうと思った。
「それでも、いいです 」と、抱き締めてキスした央翔の口唇はとても冷たかった。
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