2825人が本棚に入れています
本棚に追加
『早い』の意味は、起きるのが早いなのか、発情期が終わってしまうのが早いなのか……。
「今日、もう家に帰るんですか? 」
「そりゃ、そうだよ。発情期終わったのに、いつまでも世話にはなれないだろ 」
「……ずっと、ここに居ればいいのに 」
ぐりぐりと背中に擦りつけてくる頭を、クスリと笑って、後ろ手で撫でてやる。
「何だよ、甘えてんのか? 」
「茶化さないで下さい。俺は本気で…… 」
「分かってるよ 」
分かってる、央翔は優しい。俺の気持ちと覚悟を待ってくれているのだろう、一緒に住みたいとは言うものの、それ以上のことは言わない。飲んでいる低用量ピルの服用も、見ない振りをしてくれている。
発情期の時もずっと側に居てくれて、求めるだけ与えられて、央翔の想いに応えられていないのに、気持ちを利用するだけ利用しているみたいで、後ろめたく無いと言ったら嘘になる。央翔は番なのだから当然だと笑うけれど。
今は仕事を辞めたくない、子どもを産むのも怖い。丸ごと明け渡すには、今まで男として生きてきたプライドが邪魔をする。
「ごめん、これでも努力しようとしてるんだ 」
「そんなこと、努力することじゃあないでしょ」
ちゅっ……と、頬にキスを落とされて、その甘さに身体が熱くなった。
「それに、綺麗なのは真祝さんの方ですよ」
「……っ?! おまっ、聞いてたのか? 」
最初のコメントを投稿しよう!