6.

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まさか聞かれているとは思っていなかった呟きを聞かれていたと知って、カアッと顔が熱くなる。 「真祝さんの耳、(あか)い。美味しそう…… 」 「ば……っ!」 ぱくりと耳を咥えられ、驚いて振り向けば、そのままくるりと身体を反転させられて、正面から捕まえられた。 「発情期が終わったっていうのに、こんなに俺のこと誘ってどうするの?」 髪と同じ色の、煌めいた睫毛に縁取られた瞳が、柔らかく細められる。その緑がかったアースカラーの瞳の奥、揺らめく欲望が隠し切れずに仄かに燃えるのが見えた。 「お、まえっ、冗談にならない……っ! 」 恥ずかしさのあまり、真祝は腕を顔の前で交差して隠す。 「何で隠すんですか。見せて下さいよ 」 「やだっ! 」 「あのね、真祝さん。俺ね、いつも思うんです 」 「何を! 」 どうせ、(ろく)なことを言われない。自棄(ヤケ)になってそう言う真祝に、央翔がふふっと楽しそうに笑った。 「こんなに綺麗で可愛い真祝さんが俺の(つがい)だなんて、俺は本当に幸せだって。きっと俺達の子…… 」 言い掛けて、央翔がハッとした様に口を噤んだ。()めた言葉の続きが分かって、真祝は身体を固くする。 αがΩに種付けしたいのは当然だ。央翔が自分と結婚したがっているのを知っていて、セックスの結果である子供を欲しがっていることも知っていて、それでいて、まだ決心が付かないから何も言うことが出来ない。 「ごめん 」 詰まってそれだけ言ったら、サラリと指先で前髪を上げて、真祝の額に口唇を寄せた。 「俺の方こそ、すみません。ちょっと、調子に乗りました 」 自分のことを考えてくれる気持ちが切なくて、真祝は少し泣きたくなった。 何を迷うことがある。Ωだったらこんな理想の相手、探したって見付かるもんじゃないのに……。 央翔は優しい。とても、優しい。 だけど、この、胸の奥にポッカリと穴が空いている感覚は何んなんだろう。
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