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畳みかけるように言われて、真祝は言葉が出なくなる。
「柚井様、貴方様は何がご心配なのです? 央翔様に対して何が不安なのですか? 私が言うのもなんですが、央翔様は…… 」
「真祝さん……っ! 」
富樫を遮る様に、真祝の名前を呼ぶ声がした。見上げた、大きなサーキュラー階段の上には、びしょ濡れの髪を拭きもせず、スラックスの上に白いシャツを釦も留めず羽織ったままの央翔が立っていた。
「どこに……っ、行ったかとっ 」
大会社の御曹司にあるまじき格好だ。どれだけ、慌ててるんだよ。
「帰るよ、ありがとな 」
「待ってください! 送ります! 」
「お前、今日は仕事行くんだろ? 」
いいよと手を掲げれば、央翔が急いで階段を降りて来る。どれだけだよと、真祝は思わず笑ってしまう。そして、富樫だけに聞こえる声で言った。
「分かってますよ、富樫さん。アイツが俺には勿体ない位にいい男だってことも、俺を大切に想ってくれてることも 」
「柚井さん…… 」
そろそろ、覚悟を決める時が来たのかもしれない。
「真祝さんっ 」
濡れた身体に飛び付かれて、抱き締められる。
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