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7.
髪から滴る水に「冷たいぞ 」と言ったら、「すみません 」と謝られた。けれど離れる気はないらしい。
「なぁ、央翔 」
背中に回した手に、ピクッと真祝を包む身体が揺れる。
「お前、俺に正式なプロポーズしてくれんだって? 」
「え…… 」
絶句する央翔の素肌の胸に、「言ってみろよ 」と顔を埋めた。
「今なら聞いてやる 」
「真……祝さ…… 」
抗えきれない番の香り。この、甘い匂いと空気に身を委ねてしまうのは、何て気持ちが良くて、楽なんだろう。
うっとりと目を瞑りながら、自分の気持ちに拘るのは馬鹿げていることなのかも知れないと、真祝は思った。
「ずっと、避けてたくせに 」
拗ねたように言われて、「しないなら、別にいい 」と返せば、「冗談 」と嬉しそうに笑う。
「俺、こんな格好なのにごめんね。でも、真祝さんの気が変わっちゃったら困るから 」
央翔はそう言うと、スッと一歩下がって真祝の前に跪く。
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