7.

13/38
前へ
/329ページ
次へ
「名前、は? 」 「ちゃんとは聞いていません、連絡先も……。真祝さん? 」 真祝は、自分の考えを打ち消すように顔を振る。 いや、まだ100%ではない。自分の思い過ごしかも知れない。まさか、だって、いくら何でも、あの二海人だって、そこまでするだろうか。 「真祝さん、どうされたんですか? すごく顔色が悪いです 」 動悸が激しい。身体全体に心臓の鼓動がドクドクと響く。もう考えるのはよせと自分に言うのに、思考は止まらない。 1年前のあの出来事が起きて、そのあと何が起きた? 全ては、俺が京香ちゃんを助けたことから始まったのでは無かったのか。でも、そんな都合良く(こと)が運ぶなんてことがあるだろうか? でもそれは、普通なら……だ。考えて実行したのが二海人なら、話は別だ。誰よりも聡く知略縦横なあの男は、無理だと思われる様なことでも、やると決めたなら完璧にこなすだろう。完全な下調べの上で。思えば、今の仕事を勧めてきたのも、アイツだった。……どこからだ? 背中に冷たいものが落ちる。ゾクリと身体が震えた。 「ねぇ。『ちゃんとは』って、どういう意味?」 「真祝さん、本当に具合が…… 」 「いいから、教えて 」 違うなら、いい。違うという確証が欲しい。 真祝の真剣な表情に、京香は躊躇った素振りを見せたが、コクンと頷いて言った。 「スマホに、大人の男の人には似合わない、可愛らしいキャラクターのストラップを付けていたんです。大漁旗を背負(しょっ)って得意そうな顔をしている猫の…… 」 「猫って、『カイくん』?」
/329ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2825人が本棚に入れています
本棚に追加