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キョロッとした目と大きな耳、エラそうな態度の猫の『カイくん』は、若い子達に人気のあるキャラクターだ。真祝はこのキャラクターが好きだった。白に水色の模様の猫の名前の響きは、海を連想させ、更に名前に【海】の文字を持つ好きな男を思い起こさせた。 「はい、そうです。だから、『カイさん』と呼んでいたんです。 」 ……二海人だ。 京香の言うストラップが、脳裏にまざまざと浮かぶ。 だって、俺が付けたんだから。 『お前にそっくりだな、アーモンドみたいな目と生意気そうなアヒル口 』 カイくんシリーズの300円のカプセルトイ、所謂(いわゆる)ガチャガチャ。カプセルを開けて中身を見た途端、覗いていた二海人はそう言った。 生意気ってなんだよと笑いながら、二海人の手から持っていたスマホを奪う。 海と大漁旗、2人の名前を合わせた様なデザイン。しかも生意気な猫が自分と似てるというなら。 『じゃあ、これはお前にやるよ 』と、真祝は二海人のスマホにストラップを取り付けた。 『これでずっと、俺と一緒だな。嬉しいだろ? 』 悪戯っぽく笑ってスマホを返せば、『そうだな 』と二海人も笑って受け取った。外されるかと思ったのに、存外気にいったのか、それからもずっと付けたままだった。 願いは打ち砕かれた。当たって欲しくなかった、俺の勘なんて。 「く、そっ 」 女の子の前なのに、汚ない言葉が口から零れた。 何でだよ。 何で今更、俺の心を掻き乱すんだ。俺はもう、央翔と生きていくことを決めたのに!!
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