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「……殴ってやる 」
もし、これが本当なら、アイツが認めたならば。
真祝はガタンと音を立てて、席を立ち上がった。
「なぐ……?、どうし……、真祝さん? 」
不穏な台詞と普通ではない真祝の雰囲気に、京香がおろおろとしている。
「ごめんね、京香ちゃん。俺、行かなきゃ 」
「ちょっと待って下さい。行かなきゃって…… 」
「本当は、帰りは家まで送って行こうと思ってたんだけど 」
「それはいいですけれど。真祝さん、行くって、一体どこへ? 殴るって誰を?」
真祝はそんな京香に、ふっと微笑い掛けた。そして、テーブルに紙幣を何枚か置くと、何も言わずに入り口へ向かう。
「真祝さんっ? 真祝さん……っ?!」
背中に京香の声を聞きながら、足が自然に速足になる。
「真祝さんっ! 今夜の兄との約束っ、覚えてますよねっ!! 」
入り口のドア開けた時に放った京香の言葉が、後ろ髪を引っ張る。一瞬、足が止まり掛けたが、真祝はそれを振り切って外に走り出した。
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