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******** 勢いでここまで来てしまったが、実際に二海人の部屋の前に立った真祝は、インターホンを押す指を寸前で止めた。 京香(きょうこ)が言っていた男は、二海人だと思う。だが、地下鉄を乗り継いだり、ここに来るまで結構な時間を要したため、真祝は冷静さを取り戻してしまい、あの時思った『絶対』は、『きっと』に変わってしまっていた。 あれから、二海人には1度も会ってはいない。もう、平気な筈だ。俺の方がアイツに裏切られたんだから、俺がビクつく必要はない。 「確認するだけだ、確認するだけ 」 真祝は、ゴクンと喉のつかえを飲み込むと、インターホンに手を掛けた。 「ぅわっ……!」 すると、まだ鳴らしてもいないのに、突然ドアがガチャッと開いて、真祝は驚く。 「ま……ほ? 」 ドアから乗り出した半身、二海人は信じられないものを見るような目で真祝のことを見た。 「二、海人……?! お前、それ…… 」 信じられないのはこっちの方だ。そこに居たのは、真祝の知る爽やかで凛々しい、短い髪の二海人では無かった。目に掛かる程の前髪、それに加え、目許を縁取る銀色の眼鏡と顎下の髭。見たことのない風貌に、否が応でも目が釘付けになる。 「……あぁ、最近視力が落ちてな 」 真祝が驚いているのに気付いたのか、そう言って二海人が長めの前髪をサラリとかき上げた。
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