7.

17/38
前へ
/329ページ
次へ
その、男の色気が漂う仕種に、真祝は一瞬で自分の顔が蒸気するのが分かった。汚ならしく見えかねない格好も、する人がすれば、魅力が増すだけなのだなと思う。要するに、男前は何をやっても男前ということだ。それ以上の感情なんか、あるものか。 「……そんな事どうでもいいよ。俺はお前に聞きたいことがあって来た 」 「聞きたいこと? 」 「久我(くが) 京香(きょうこ)……、知ってるだろ?」 その名前を聞いた途端、二海人が口唇の片端をふっと持ち上げた。 「そんなことで来たのか? 」 その表情(かお)で確信する。やっぱり、京香の想い人は二海人だったと。 「やっぱり、お前…… 」 「まぁ、立ち話もなんだから。中、入れよ 」 二海人に顎で促され、真祝は思い出したくもない思い出の残る部屋へと、足を踏み入れた。 ガチャンとドアの閉まる音が響く。二海人が真祝を追い越して、先に部屋の奥に入って行った。真祝もその後に続く。 「まだ、ここに住んでたんだ 」 ポツリとそう言ったら、少しの沈黙の後に「気に入ってるからな 」と二海人は言った。
/329ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2825人が本棚に入れています
本棚に追加