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その、男の色気が漂う仕種に、真祝は一瞬で自分の顔が蒸気するのが分かった。汚ならしく見えかねない格好も、する人がすれば、魅力が増すだけなのだなと思う。要するに、男前は何をやっても男前ということだ。それ以上の感情なんか、あるものか。
「……そんな事どうでもいいよ。俺はお前に聞きたいことがあって来た 」
「聞きたいこと? 」
「久我 京香……、知ってるだろ?」
その名前を聞いた途端、二海人が口唇の片端をふっと持ち上げた。
「そんなことで来たのか? 」
その表情で確信する。やっぱり、京香の想い人は二海人だったと。
「やっぱり、お前…… 」
「まぁ、立ち話もなんだから。中、入れよ 」
二海人に顎で促され、真祝は思い出したくもない思い出の残る部屋へと、足を踏み入れた。
ガチャンとドアの閉まる音が響く。二海人が真祝を追い越して、先に部屋の奥に入って行った。真祝もその後に続く。
「まだ、ここに住んでたんだ 」
ポツリとそう言ったら、少しの沈黙の後に「気に入ってるからな 」と二海人は言った。
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