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「……渡すも何も、アイツと結婚するんだろう? 」
「するよ。お前が俺のために見付けてきてくれたαだもんな 」
「……。 」
二海人は否定しない。真祝がそのことに気付いて、ここに来たことが分かっているからだ。それでも、確認せずには居られなかった。
「京香ちゃんと朝会ってたの、お前だろ? どこで知ったのか分からないけど、央翔がαだって知って自分に夢中にさせたんだろ? 発情期が近いって分かってて、電車に乗せて…… 」
京香の乗り換えする駅の改札と、真祝の降りる駅の改札が、同じ車両から近いことは勿論計算済みだったろう。真祝が毎朝その車両に乗ることは話していたし、京香にしても駅前に近いコーヒーショップでの好きな男との逢瀬の時間は、一秒でも長い方が良かったに違いないから。
「お前、京香ちゃんに何かあったらどうする気だったんだ? 」
「ちゃんと、お前が助けたろう? 」
悪びれない言い方に、真祝は笑いたくなった。
「何で、……何で、央翔だったん、だよ 」
「眉目秀麗、品行方正、加えて家柄良し、学歴良し。頭も切れて、しかも性格も気さくだと評判もいい御曹司。αはαでも、あんな最上級のα、滅多に居ない 」
「それで、俺にあてがってくれたっていうの? ありがとう…… 」
言い終わらない内に、真祝は手近にあったクッションを二海人に投げつけた。
「……なんて言うとでも思ったかよ、ボケッ! まさか、俺達が運命の番同士ってことも知ってたのかっ? 」
まともにクッションが顔に当たって、チッと舌打ちをした二海人が親指で口元を拭いながらこちらを睨む。
「……そんなこと、何で俺に分かるんだよ。でも、あの坊っちゃんは運命で無くても、お前のことを運命と言ったさ。今迄、お前を欲しがらなかったαなんて見たことがないからな」
「ひっ、人を淫乱みたいに言うな……っ! 」
「言ってねぇよっ! お前が知らないだけだっ! 」
いくら、俺のことを好きな女のために厄介払いしたかったからって、こんなのはあんまりだ。しかし一応は、真祝のことを大切な『友達』だと思っていてくれたということなのだろう。
「……ホント、最低だ。」
最低で残酷。でも、それでも……。
「どうして、お前なんか好きなんだろう 」
どうして、向かう想いを止められない?
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