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真祝が呟いた言葉に、二海人が瞠目したのが分かった。
「まほ、本気で言ってるのか? 」
「何を? 」
「いや、まさか、あの坊っちゃんより? 」
瞬間、カッと頭に血が上ぼる。
「なんだよ、それっ! 俺はお前に、ずっと言い続けてきたじゃないか! 俺は、生まれてこの方、お前以外を、好きになったことなんて、ないっ! 」
興奮して話したせいか、はぁはぁと呼吸が苦しい。胸の痛みがそれに拍車を掛け、涙がボロボロと溢れてきた。
「お前も、報われない相手を想ってるって、のは、分かった。その気持ちが、分かんない訳ではないから、さっき言った通り、俺はお前を赦してやる。だから、お前も、俺にお前を……、諦めさせ、ろ……っ 」
「どういう意味だ? 」
「俺を、抱けっ……!」
もう、苦しいんだ。身体と心がバラバラで、おかしくなる。均衡を保てない。
「お前、自分で言ってること分かってる? 」
近付いてきた二海人に掴まれた腕が、ビクッと震えた。
「そんな指輪して、俺に抱かれるっていうのか? 」
「指輪は、外さない。今だけ、だ。1度だけ俺を抱いてくれたら、もう、お前に無理は言わない。……一生、会わなくてもいい 」
真っ直ぐに二海人の瞳を見詰めれば、真祝が本気なのを理解したのか、大きなため息を吐きながら二海人が言う。
「……番以外とのそういう行為の拒否反応は、相当エグいぞ? 」
「自分のことだよ? 言われなくても分かってる 」
今だって、腕を掴まれただけなのに身体が強張る。震えが止まらない。この場から逃げ出さないように、踏み留まるのがやっとだ。相手は二海人だっていうのに。
そんな真祝を見て、苦笑しながら二海人が眼鏡を外した。カシャン……と、テーブルに置く音が部屋に響く。
「お前、本当に馬鹿だな。Ωが、αより、運命の番より、βを選ぶなんて聞いたことねぇよ 」
「……! だからっ、馬鹿って言う……」「黙れ 」
二海人に人差し指で顎を持ち上げられたと思ったら、次の瞬間には口唇が重ねられていた。
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