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柔らかく食まれた口唇がちゅっ……と、音を立てた。胸の奥がじんと疼く。自分からではなく、初めて与えられた好きな男からの口付けに、感情が溢れる。
ずっと、二海人に聞きたかった。確かめたかったこと。
「ん……っ。ねぇ、二海人。僕、そんなに邪魔だった? そんなに面倒臭かった? 」
口唇が触れるか触れないかの距離で聞けば、「……黙れって、言ってんだろ 」と二海人が苛ついた声を出した。
怒っているのかとも思ったが、二海人はしがみつく真祝に、まるで自分も求めていたかのような噛み付くみたいなキスをする。口腔を探られ、見付けられた舌に蜂蜜のようにねっとりとした舌を絡められ、あまく吸われては、言われなくても、もう話すことなんて出来ない。
何度も角度を変えて、互いに舌を絡める。上を向きながらの口付けに、合わさった唾液が真祝の喉を鳴らした。弾力のある、とろりとあまい口唇に貪られて、じわじわと脳髄が溶かされてゆく。
このままお互いの口唇から溶け合ってしまいたいのに、不意に口付けを解かれて、真祝は茫然として二海人を見上げた。ソファーから立ち上がった二海人が、腫れぼったくなった真祝の口唇に指先で触れる。
「キスは、大丈夫そうだな 」
優しい微笑みを向けられて、心臓がきゅっと締め付けられる。同時に、離された口付けに不安になった。
「……しないとか、言うなよ? 」
「言わねぇよ。心的外傷があるもんでな、ここではしないだけだ 」
言うなり抱き上げられて、突然密着した身体に悪寒が走る。
「や…… 」
自分の行動に一番驚いたのは真祝だった。心は望んでいるのに、身体が二海人を拒んでいる。反射的に腕を突っ張ねた真祝に、二海人が眉を顰めた。
「あ、違…… 」
けれど青くなる真祝に、「心配するな、分かってるから 」と二海人は、ふわりと悲し気に笑った。
運ばれたのは、奥の寝室だった。まだ外は明るくて、部屋にはカーテン越しに淡い日射しが入ってくる。
そっと置かれたベッドの上、真祝は、自分に覆い被さりながら「これが最後だ、もう聞かねぇぞ? ……本当に、いいんだな 」と確かめてくる二海人の胸ぐらを掴んで引き寄せた。
「そっ、ちこそっ! 何があっても、俺がどんなに嫌がっても、絶対に止めるなよっ!! 」
そう言う真祝の手は、カタカタと震えている。
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