7.

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「……了解」 その手を自分の片手で包んで、愛おしそうに手の平に口付ける。伏せた睫毛が端正な顔に影を落とし、西日が艶麗に二海人を照らす。 「本当は、こっちも()めてやれる自信なんかないよ。でも、無茶はしたくない 」 艶めいた低い声に、真祝は息を飲んだ。どうしてこの男は、僕の気持ちを、心を、一瞬で持っていってしまうんだろう。どんなに努力して忘れようとしたって、表情一つ、言葉一つで全て無かったことにされる。二海人しか、見えなくされる。なのに……。 同時にゾワリと全身を蝕む、気持ちが悪い感覚が真祝の背筋を走る。 パシッ……と、響く乾いた音が何の音なのか、瞬間、真祝は理解出来なかった。 「あ…… 」 優しい手を(はた)いて取り返した手が信じられなくて、驚いて自分の手と二海人の顔と見比べる。 この感覚は、前に発情期で見知らぬ男に襲われた時と同じものだった。こんなに好きなのに、こんなに愛してるのに、他の人間と(つがい)契約をしたというだけで、自分の身体は二海人を見知らぬ男と同じだと判断する。 「ごめ……、僕 」 ボロボロと泣きながら二海人に謝ると、「まほは何も悪くないんだから、謝るな 」と困った顔をされた。 「お願いだから、泣かないでくれ 」 抱き締めることを躊躇っているらしい二海人に、真祝は抱き付く。 「おい……?! 」 二海人の生成りのシャツに顔を埋めると、太陽の匂いがした。央翔の、(つがい)の官能を呼び起こす匂いとは全く違う、暖かな匂い。 「キス、して。ずっと、キスしてくれてたらきっと大丈夫だから。それから、ぎゅってして。たくさんして 」 「まほ…… 」 「抱けなんて、言って、ごめん。ただでさえ面倒臭いのに、発情期にこんなこと言って、ごめんなさい。でも、どうしても、今、二海人に抱いて欲しい 」 止まらない涙のせいで、二海人のシャツの色が変わっていく。まるで、灰暗い真祝の企みに染まっていくようだった。 「先に、薬飲んだ方がいいんじゃないのか? 」 心配してくれる二海人に、真祝は首を振る。 「大丈、夫。僕ん(ナカ)、これから、いっぱい注いでくれるんでしょう? 」
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