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「うっ、うぇっ……、えっ…… 」
ずっと、二海人に抱いて欲しかった。ずっとこの時を夢見ていたのに、αに、たかが項を噛まれただけで、こんなになっちゃうの?
泣きながら吐く。嗚咽が止まらない。
好きなのに、誰よりも好きなのに、1回だけでいいのに、それ以上望まないのに、それさえ許されないっていうの?
「まほ…… 」
「やだ……っ、見ないで 」
涙と鼻水と吐瀉物で、もう顔はぐちゃぐちゃの筈だ。こんな顔、二海人に見られたくなかったが、縛められた身体では隠すことも隠れることも出来ない。
怖いのは、こんな自分を見て、どんな理由であろうともやっと抱いてくれる気になった二海人の気が削がれてしまうこと。
「見な、いで。ふみ、と、お願、だから、止めな……いで。このま、ま……、して 」
見苦しい顔を見せないよう、せめてもと横を向いて目を瞑っていると、「バカまほ 」と上から優しい声が降ってきた。
「止めねぇよ、……お前がここまでしてるのに止められるかよ 」
言いながら、伸ばした袖口で真祝の顔を拭く。
「ふみと……っ? 汚れる……」
「気にするな 」
一通り拭うと、そのままその手で上を向かせられた。
「キスは大丈夫なんだろ? 」
落とされる口付けに、真祝は焦る。大丈夫も何もそれ以前だ。
「駄目っ、ふみっ……、きたな、いっ……。離して……っ」
「平気だよ 」
けれど、真祝の言葉は無視され、動かない様に頬に添えた手で顔を固定された。
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