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腹の内側に広がっていく熱。
何が起きたのか理解すると同時に、徐々に歓喜が湧き上がってくる。
ずっとこれが欲しかった。Ωの本能に逆らってでも。
ゆっくりと送られる残滓さえも取り零したくなくて、二海人の腰に足を絡める。
「嬉し……。 僕ん中、二海人でいっぱい 」
額に張り付いた髪を払ってくれる手が、優しくて嬉しい。真祝はその手を取ると、自分の手を重ねて頬に持っていく。
「も、死んでも、い…… 」
涙が溢れて、溢れて、止まらない。色んな感情が胸の中で鬩ぎ合う。すりっと二海人の手に頬を寄せると、柔らかく包む様に触れてくれた。例え、それが同情からだとしても、今はその優しい気持ちに縋りたかった。
「……くそっ、こんな事なら 」
二海人の吐き捨てる様な声が聞こえる。だけど、曇る視界の中ではその表情は見えない。でも、見えなくて良かったと思う。二海人が怒るのは当然だけど、出来るならそんな顔を心に焼き付けたくない。
真祝は薄く微笑みながら、首を振った。
分かってる、僕は最低だ。
そして、本来なら1番に愛するべきだった運命の番を思い浮かべる。
ごめん、央翔。僕はもう、お前の所に戻れない。
だって、幸せなんだよ。あんなに大切に抱いて貰った何回よりも、ただ、この1回がこんなにも嬉しい。
この思い出さえあれば、どんな罰を受けようとも生きていけるとさえ思えた。
熱が引き、ズルリと二海人が真祝の内部から出ていく。ぞくりと背中が震えて、現実に戻ったことを知った。
「ありがと……、ごめんね 」
番持ちで発情期のΩなんか、抱いてくれて。
少しの間の後、二海人が言う。
「お前は、本当に馬鹿だよ 」
「……だから、馬鹿って言うな 」
思わず笑った真祝の口唇に、そっと落とされた柔らかな口付けは涙の味がした。
お互いに、今しかないことは分かっていたのだ。
片方は諦めるために。もう片方は諦めないために……。
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