月夜の小鳥は哀切な嘘をつく。1

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当たり前だ。 ずっと二海人が好きで二海人しか見てない。世の中には、発情期の辛さを収める為に誰とでも寝るΩもいるが、真祝はどんなに辛くてもそういうことは好きな人としかしたくなかった。 だから、駆け引きなんて知らないし、こういう時にどうやって相手をまたその気にさせればいいのかも分からない。さっきまで、キスさえ知らなかったのだから。 当然のことを聞かれ、キョトンとする真祝を見て、二海人がため息を吐く。 「……レが、……して、どうするよ 」 片手で顔を隠して落とす、自嘲的な呟きはハッキリとは聞こえない。 ただ、後悔していることだけは分かって、胸がずくんと痛む。 真祝はすがるように、二海人のシャツの袖を摘まんだ。 「ねぇ、二海人。俺、構わないよ 」 「俺は構う 」 キッパリと返答されて、どうやら、もうこれ以上は流されてくれないらしいと悟る。 こんなにしんどい状態になっても、二海人は自分のことを抱きたくないのだと思ったら、喉の奥が掠れたように痛み始めた。 情けないのは、悲しくて泣き出したいのに、それでも身体があさましく熱を持ったままだということだ。 「……逃げんの? 」
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