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「やっと、会えました 」
背中で聞き慣れた男の声を聞いて、玄関の鍵を開けっ放しにしていたことに気付き、自分の迂闊さに真祝は舌打ちをした。平日の昼間だったから、油断していたのだ。
二海人と身体を繋いだあの日から、1ヶ月が経っていた。
「……ストーカーかよ、怖ぇな 」
「引っ越して、何処へ行く気ですか? 」
ガランと片付けられた部屋、隅に積まれた段ボールを見れば一目瞭然のことだったから作業する手を休めずに黙っていた。
「俺んトコで無いのは、確かですね。1ヶ月も何処に居たんですか? 」
「お前に関係ねぇだろ 」
玄関横の壁にトン……と寄り掛かった央翔が、ため息を吐く。
「関係ないなんてご挨拶ですね。俺は貴方の番であり、婚約者ですよ? 」
「指輪は送り返した 」
「……そんなんで、納得する訳ないじゃないですか 」
低い、怒りを秘めた声。
「突然行方が分からなくなって、会社も辞めて……。何があったんですか! あの日だって、俺はずっと待ってた! 」
「行けねぇって、メールしたろ 」
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