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「そのメールの後っ、1ヶ月も連絡が取れなくなるってどういうことですかっ! 」 「……静かにしろ 」 声を荒げる央翔に、今度は真祝がため息を()く。 「騒ぐな、近所迷惑だ。お前んトコの豪邸とは違うんだよ 」 ぐっ……と息を詰めた央翔が、声のトーンを落とす。 「でも、それまで、あんなこと無かったじゃないですか 」 自分でも理不尽なことを言っているとは分かっていた。央翔が自分を(なじ)りたいのは当然のことだと思う。それだけのことをしている自覚があるから、央翔の顔を見ることが出来ないのだ。 「何かあったと分かって、直ぐにこのアパートに来たけれど貴方はいないし。貴方の性格上、(あらかじ)め約束を断ることはあったって、人を待たせた状態で断ることなんかないから余計…… 」 「何、人のこと分析してんだよ 」 央翔が、あの時思った通りの行動を取ったと知り、やはりこの部屋には戻らなくて正解だったなと思いながら、同じ事をしている自分達に可笑しくなる。そうだ、一緒に居た1年という期間は、決して短いものではない。 「ちゃんと聞いてください。 俺は、心配したんです。京香(きょうこ)が、真祝さんと会った時に様子がおかしかったと言うから、本当に心配してた。ずっと、探してたんですよ 」 「頼んでない 」 「真祝さん…… 」 業を煮やしたのか、部屋に上がり側に寄って来たのが気配で分かる。 「もう、意地を張るのはやめてください。俺が何かしたのなら謝ります。言いたくないことがあるなら無理には聞きません。さっき、頭に血が(のぼ)って大声を出したのもすみませんでした。だから…… 」 別れるとか、言わないでくださいーーー。 傍らで膝を折った央翔に、左手を取られる。両手で祈るように懇願され、真祝は俯いた。 「真祝さん。お願いですから、顔を上げて。俺のことを見てください 」
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