7.

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いつも愛を紡いでいた口唇が、呪詛の様な言葉を吐く。覚悟はしていても、どうしようもなくやるせない気持ちに心を抉られる。 央翔が立ち上がる音が聞こえた。気配で側に近付いて来たことが分かる。 「何、俯いてるんですか? 真祝さんは復讐が叶って嬉しい筈でしょう? もっと喜べばいい 」 乱暴に顎を掴まれ、上を向かされる。有無を言わさず、合わされる視線。 「狡いですよ。貴方がそんな傷付いた顔をしないでください 」 央翔の緑がかった瞳は、とても冷たく燃えていた。侮蔑と悲しみと悔しさと、色々な色が入り雑じって逆巻いている。 思わずゴクリと息を飲めば、くっと央翔が苦く笑った。 「本当に狡い。こんな時なのに、どうして貴方はそんなに綺麗なんですか 」 顎を掴む手が、するりと頬を撫でて離れて行く。 「央翔…… 」 思わず名前を呼んでしまった真祝に「帰ります 」と、央翔が背を向ける。 「そうですね、どうしても我慢出来なくなったら抱いてあげないこともありません。真祝さんは自分でも言うところの、『ど淫乱』ですから。まぁ、俺の気が向いたらですけどね、だけど…… 」 低くなった語尾の声音に、ピンと空気が張る。けれど続けられた言葉に、真祝は目を(みは)った。 「戻りたくなっても、今迄の様な、陽の光の当たる場所に戻れるとは思わないで下さい 。俺を裏切った貴方に、ピッタリの場所を用意しますから 」 馬鹿だね、央翔。俺を愛人として、囲ってくれるって言うの? いざとなったら、お前に助けを求めろって言うの? そんなの駄目だ。俺なんかに未練を残しちゃ、駄目だ。 「……そんなこと、する訳ねぇだろ 」
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