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二海人は持ってきた資料を配る様に、目で部下に合図をする。
「そうですね、積もる話は『後から』ということで。今回は貴社の専務自ら、プロジェクトに参加して頂けるということで楽しみにしています。是非、成功させましょう! 」
あっちは話すことなんかないと思っているかも知れないが、こっちは聞きたいことが山程ある。逃がすものかと二海人は思っていた。
だが、意外にも合同プロジェクトの顔合わせが終わってから声を掛けてきたのは央翔の方だった。
「 ……カナダの開発部へ行かれていたなんて、エリートコースじゃないですか。しかも、その歳でチームリーダーと聞きましたよ。優秀なんですね 」
これから嫌という程、顔を会わすことになる。最悪、今日でなくても焦る必要はないが、まさか嫌っているであろう自分にあっちから接触してくるなんて驚かなかったと言えば嘘になる。
「3年程ね。先月帰ってきたばかりだけどな 」
「それで、今回のプロジェクトに参加ですか? 本当に優秀だ 」
央翔が目を瞠ったのが分かった。くっと笑って「βなのに?」と言ってやると、図星だったのか、央翔のそつがない笑顔がピクッと動く。
資料を片付けながら二海人はニヤリとした。
「全然凄くなんかありませんよ。二十代で専務になった君に比べたらね 」
当て擦りな台詞に、流石の央翔も眉間に皺を寄せる。 二海人は、央翔の肩にポンと手を置いた。
「そんな顔すんなって。まぁ、俺が優秀なのは認めるけどな 」
「わざとですか。相変わらず、嫌な人ですね 」
「これ位、許せよ。可愛いまほちゃん、譲ってやったんだからさ 」
「それも、わざとですか 」
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