月夜の小鳥は哀切な嘘をつく。1

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だから、涙を誤魔化して睨みながら恨めし気に言った言葉は、八つ当たりだとの自覚はあった。 驚いたのは、聞き流すと思っていた二海人がその言葉に反応したこと。  普段は何事に置いても冷静な二海人が、僅かに肩を揺らした後、黙ってしまったことに、いつもと違う空気を感じる。 「二海人?」 真祝が思わず名前を呼ぶと、二海人が、自分を落ち着かせるみたいに大きく息を吐き、自分の顔を覆っていた手をゆっくりと外した。 その下から現れたのは、普段は真祝にはあまり見せることのないきつく強い眼差し。 「……いいんだな 」 「えっ…… 」 「本当に身体だけでいいんだな 」 「い、いよ……っ!? いいって、さっきから言ってるっ!」 低く、迫力のある声で確かめるように問われて、どちらが正解なのかも分からずに真祝は焦りながら答えた。 それを聞いた二海人の眼光が、一際鋭くなる。 「俺とお前は、この先、ずっと一緒には居られない 」 「……っ?! 」 「それでもか? 」 「どうして、そんなこと二海人に分かるんだよっ 」 いつも優しい二海人の突き放した物言いに、心臓が切られた気がした。 もしかしたら、意趣返しかもしれないと思いつつも、それは二海人の本心だと、次に放った言葉で確信する。
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