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「んー、そうだなぁ 」
奥からのっそりと外を覗き込むようにして、三崎が外の様子を伺う。
「俺、やっときますよ 」
言いながら外へ向かおうとすれば、「あっ、また誤魔化そうとする」と聞き捨てならないことを言われた。
「何も誤魔化そうとなんて、してませんて 」
「まほちゃん、うちの客増やす程モテんのにさぁ……」
「売上に貢献してるなら、いいじゃないですか 」
「それは感謝してる。ありがとう、って違う! もうそろそろ、ぶった切るばかりじゃなくて、周りを見てもいいんじゃないかと 」
またそれか。出逢いが出逢いだっただけに、店長はオーナーで奥さんのみすずさんと一緒に要らぬ心配をしてくれる。
「まほちゃん、女の子もいいぞー。可愛いし、柔らかいし。男で失敗したなら、次は女の子にしてみればいいのに」
「うわっ、出た! セクハラ、ヒンシュク発言! 世の女の子達に謝って下さい。それに、考えたら分かるでしょ? 女の子なんて余計に駄目です。アラサー、子持ちの捨てられΩなんて、誰も相手にしませんよ 」
「そうかなぁ、それを持って余りあると思うんだけどなぁ 」
「何の欲目なんですか、それは。それから俺、何度も言ってるじゃないですか。愛だの恋だのってのは、もうウンザリなんですよ 」
そう、もうこりごりだ。自分は恋しただけだった。だけど、恋したばかりに、大事な人達を騙して、傷付けた。もうあんな想いは2度としたくない。
今の所は諦めたのか、三崎がふぅとため息を吐いた。そして、「今日、みすずのヤツが、みおにレモンタルト焼いてるから、帰りに持ってってやれ 」と言った。
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