月夜の小鳥は哀切な嘘をつく。1

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「俺が決めているからだ 」 いつかは振り向いて貰えると、抱いていた僅かな望みも呆気なく砕かれた。 「俺が、男だから? Ωだ、から? 」 二海人は何も言ってくれない。でも、そんなのはどっちでも大した差は無いのかも知れない。 今までの付き合いで嫌という程分かっている。 この頑固な男は、1度自分で決めたことは決して覆さない。 ……酷い男だと思った。 こんなに好きだと言っているのに、人の気持ちを知った上で他の相手にしろと言うのも、二海人にとって真祝は何処まで行っても友達であって、それ以上にはなり得ないからだ。 心臓が、どくどくと真っ赤な血を吹き出す。 けれど、酷い男は更に追い討ちを掛けるかのように言った。 「それでもいいなら、楽にしてやるよ 」 怒っていながらも、友達としての真祝を見捨てられない、突き離せない。 想いは無いくせに、同情という名前のもと最大限の譲歩をしてくれようとするから、尚更質が悪い。 しかも、自分はその甘い提案を拒めない。
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