8.

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そう言った瞬間、みおの顔がぱぁっと輝く。 「おつきさま! おとさんっ? 」 「そう、みおとまほを迎えに来たんだ 」 「みおの、おとさん!!」 躊躇いなく胸に飛び込んで来た我が子が、限り無く愛おしい。きっとこの子も、自分が分かった様に、直ぐに理解したのだ。抱き締めながら、細く柔らかい髪に顔を埋める。その時だった。 ドサリと落ちる荷物の音。 「みおから、離れろ……っ! 」 次いで聞こえた声に、鼓膜があまく震えた。 振り向けば、恐い表情(かお)をしながら、一直線にこちらへ向かってくる真祝の姿が目に映る。二海人は、みおを抱いたまま立ち上がった。 「……みおを、返せ 」 「……。」 正面に立ち、自分を見上げる真祝から目が離せない。睨み付けられているのに、瞬きも出来ない程、可愛いくて堪らないなんてどうかしている。 「まほは、抱き付いて喜んでくれないの? 」 軽口に、ギリッと睨む瞳の光が強くなる。二海人は、ふぅっと溜め息を()いた。 まぁね、自分のして来たことを考えれば、一筋縄じゃいかないこと位、分かってはいたけどね。 「そんなに恐い顔するなって。みおも恐がってるだろ、ほら……? え? 」 真祝に渡そうとすれば、イヤイヤをしながらみおが二海人にしがみついてくる。 二海人は宥めるようにみおの頭を撫でると、そっとその小さな耳許に内緒話をするみたいに囁いた。  聞いたみおがビックリした顔をして二海人の顔を見る。 「ほん、と? 」 「本当だよ。だから今は、まほん所に行きな 」 頷いたのを確かめて、二海人が大人しくなったみおを真祝に差し出せば、引ったくる様に奪われた。手から暖かい重みが消えて、寂しくなる。 「何しに来た 」 「最愛のまほちゃんと、俺の子供に会いに 」 二海人は後ろ手でテーブルに両手を付くと、真祝にニッコリと笑い掛けた。 ギョッとした表情の後、真祝が叫ぶ。 「お前の子じゃないっ! 」 「そうなの? 」 ピクッと自分の蟀谷(こめかみ)が動いたのが分かった。 「そうだ! 」 見ると、真祝に抱かれているみおが不安そうな顔をしている。それはそうだろう、突然現れた、父親だと名乗る男とそれを否定する母親。誰だって不安になる。幼い子供なら、尚更にだ。 二海人は先程よりも、大きな溜め息を吐き出した。 「な、何だよ 」 じっと見詰めてやると、真祝が焦ったように顔を反らす。 変わらない反応。大丈夫だ、真祝にはまだ俺に対する感情が残っている。 「それにしても、あんまりじゃないのか? お月様ってさ、俺のこと殺すなよ 」 「星よりマシだろ…… 」 ハッとした様に真祝が慌てて自分の口を押さえた。だがもう遅い。
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