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「ん……、ふっ 」
絡み付く熱が、真祝の身体の力を奪っていく。柔らかな優しい口付けに、いくつもの吐息が零れ落ちた。
ふと見ると、ゆらゆらと揺れる水面が、薄暗い部屋の天井に反射している。本当に海の中に居るみたいだなと、海って暖かいんだなと波間に揺蕩う魚の様に真祝は思う。
甘やかな口唇が、名残惜しそうに離れた。真祝は二海人に寄り掛かると、身体を預ける。
「あのな 」
「ん……? 」
「みおの『お』は『音』だよ 」
「音? 」
「俺ね、ずっとお前の、……二海人の声を、奏でる音を聞きたかったんだ。もう1度だけでいいから 」
声だけじゃない。何でも良かった、そこに存在すると実感出来るお前の音が聞きたかった。
抱き締められた先、胸に当てられた耳許にトクトクと心臓の音が響く。
耳をすまして聞いていると、「俺の音が聞こえるか? 」と聞かれて真祝は頷いた。
「何て聞こえる? 」
「まほが好きだって言ってる 」
クッと二海人が笑うから、「絶対言ってた 」とムッとしながら言ったら、ちゅっと鼻先にキスをされた。
「結婚しようって、言ってなかったか? 」
「けっ……?! 」
「するだろ? 」
話が一足飛びに進むから、驚いてしまう。ここに二海人が居るってだけでも信じられないのに。
俺は二海人が恋し過ぎて夢見てるのかな? それとも、幻覚? けど、いくら夢でもあんまり望み過ぎたら覚めてしまうかもしれない。
「お、俺なんかじゃ、駄目だよ。俺、番持ちの捨てられΩだし、エリートの二海人に釣り合わな…… 」
「酷いな、真祝。お前の好きな男は、そんなに不誠実に見えるか? 」
「二海人、でも俺…… 」
「……するだろ? 」
慌てる真祝を制止する威圧的な低い声に、身体が揺れる。
でも、ずっと、ずっと好きだった人からこんなことを言われて、断れる人間なんかこの世にいるのだろうか? 偉そうな態度なのに、何て甘い……。
「ふぇうぅ、するぅ…… 」
ビックリして、また涙がポロリと落ちた。キャパオーバーでおかしくなりそうだ。
派手にしゃくりあげると、指先で真祝の涙を拭ってくれる。
「それでな、まほにお願いがあるんだけど 」
「何? 何だよ 」
もう、何があっても、何を言われても多少のことじゃあ驚かない。
二海人は少し困った顔をしながら言った。
「お前の旦那になるヤツな、バカだからさ、お前の居場所が分かった途端ここまですっ飛んできて、夜寝るとこないんだよな 」
今夜、泊めてくんない? ーーー甘えた声で言われて、瞠目した真祝はほんのりと頬を染め、「しょうがないな 」と微笑んだ。
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