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「海音、寝たのか? 」
まだ濡れた髪を、タオルで拭きながら言うと二海人が頷く。
「まほのこと待ってるって頑張ってたけど、今さっき落ちたよ 」
開いた襖の奥、リビングからの光だけが差す薄暗がりの部屋。すやすやと敷かれた布団で眠る海音の側で、肘を付きながら一緒に横になる二海人がそう言った。
ポンポンとリズム良くあやす手を止めて、身体を起こす。
家に帰る前、ショッピングセンターに寄って買ったパジャマ姿にドキドキしてしまい、真祝は目を逸らした。
「あ、あっという間に懐いたな。あまり人見知りはしない子だけど驚いた。ずっと会ってなくたってお前が父親だってこと、分かるんだよな 」
「違うよ、これまでお前が素直ないい子に育ててくれたからだよ。それにずっと俺が父親だって教えてくれてたから……、真祝 」
名前を呼ばれてそちらを見ると、ふんわりと優しく微笑う二海人が「おいでよ 」と言って立てた片膝をぽんと叩いた。
「うん……」
真祝は二海人に近付くと膝を付いて、その首にほっそりとした腕をたおやかに回した。
「本当に俺で、いいの? 」
「……お前がいいよ 」
洗いざらしなのにサラリとした前髪の間から覗く瞳が、柔らかく細められる。
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