小鳥の憂慮、或いは月の贖罪と錯誤。そして、あらゆる劣情。

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それからだった、三崎とみすずにはとても助けられている。口では言えない程に。 海音を産んだ時もだ。男Ωの出産は女性のそれとは違い、子宮の位置や骨盤の形からも難産になり易いと言われているが、真祝も漏れなく苦しむこととなった。 5分置きの陣痛がきても産まれる気配は無く、丸々2日、痛みで眠ることもままならなかった。発熱し、体力は削がれ、医師にこのままでは身体がもたないと促進剤を使う旨を告げられた。この苦しみから逃れられるのであればと思って二つ返事で頷いたが、薬を使った後がまた更に辛かった。 点滴を毟り取りたくなるくらいに、絶え間なく襲ってくる痛みは半日続く。 何度も何度も二海人の名前を呼んだ。来ることはない決してないと分かっていても、気付けば泣きながら呼んでいた。 そんな真祝の背中を擦り、手を握って、側で励ましてくれたのがみすずだった。 「好きな人の子を産むんでしょう! 頑張りなさい! 」ーーーと。 その頃の話をすると、二海人はとても淋しそうな顔をする。 そして、もう2度とそんな想いはさせないからと抱き締めてくれる。 二海人の腕の中は暖かくて、充分に幸せだ。だから、これ以上望んだらいけないのだと思う。欠片しか貰えなかった時のことを考えると、全部を欲しがるなんて許されないことだ。
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