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「ちょ……っ、二海人? 」
「……キス、してもいいか? 」
低音の甘やかな声が、鼓膜に響く。
「そんなのっ、言わなくたっ……?! 」
振り向き様、向きを変えられ、そのまま口唇を重ねられる。最後まで言わせて貰えなかった言葉ごと飲み込まれ、初めから舌を探る深い口付けにクラクラと目眩がした。
トンと背中に壁が当たる。擽るみたいに喉元に触れる指先、屈みながら頭上で壁に付く肘。
追い詰めている様で、実の所、決して無理強いはせずに、真祝の逃げる余地を残している。そんな余裕のある態度が、悔しくてならない。
本当は、他の何も何も見えなくなるくらい夢中になって欲しい。見境なく、自分だけを欲しがって欲しい。
俺なんかに、そんな気持ちにはならないんだろうけど。
「離、して…… 」
まだ自分の足で立てるうちに、二海人の胸元を押し返して口付けを解く。
「嫌だったか? 」
好きな男から与えられる口付けが嫌な訳はない。ただ、自分だけ好きなことが惨めなだけだ。
真祝はふるふると首を横に振った。
「だったら…… 」
再び重ねてこようとする口唇を、真祝は手の平で制止する。
「無理しなくてもいいよ 」
二海人の動きが、ピタリと止まった。
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