2824人が本棚に入れています
本棚に追加
/329ページ
「どういうことだ? 」
鋭くなった声音に、身体がビクッと震えた。そして、直ぐに自分が言ったことに後悔する。
「だって、二海人、無理してんじゃん…… 」
段々と小さくなる語尾。余計なことは黙っていればいいものを、思っていることを隠せない自分の性格が恨めしい。
二海人が真祝の顔を挟む様に、後ろの壁に両手を付く。
落ちる溜め息。項垂れた顔からは、表情は見えない。
「お前、人がどんな気持ちで…… 」
そんな二海人を見て、ズキッと胸の奥が軋んだ。
……やっぱり、俺と結婚したの、後悔してるんだ。
「ごめん、俺のせいで 」
友達としか思ってないのに、俺が勝手に好きになって、子どもまで作って、責任取らされて。
きっと想いまで欲しがるなんて間違ってる。分かってるんだ、でも。
「いや、まほのせいじゃない。お前にそんなことを言わせる程、俺に余裕が無いってことだろう? 」
バレてたなんて最低だよな……と、二海人が深呼吸に似た大きな溜め息を零す。
はっきりと認める言葉に、真祝は泣きたくなった。
「そんなに、好きなの? 」
「……は?! おまっ?!」
焦ったのか、いきなり二海人がゲホゲホと噎せた。
体を二つ折りにして咳き込む二海人の背中を、びっくりしながら慌てて擦る。
「大丈夫かよ? 」
「悪い…… 」
「でも、そこまで驚くこと? 」
「驚くよ。つか、んなこと聞くか? 普通…… 」
「聞くよ、大事なことだもん 」
端正な横顔がハッとしたような表情に変わって、「大事、か 」と呟いた。
「真祝 」
「な、何? 」
向き直って握られる両手。見詰める、強い眼差しにドキリとする。
けれど続けられた言葉は、真祝を絶望の淵へと落とした。
「好きだ、愛してる 」
……ホント、最低だ。
次の瞬間、ぱしんっ……と部屋に乾いた音が響いた。
最初のコメントを投稿しよう!