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泣くのを我慢した喉奥から、ぐぅっと変な音が出る。
「自分ばかりが正しいと思うなっ! 正しければ何をやっても許されると思うなっ!たまには、自分が折れることも覚えろよ! 」
「それをお前が言うのか? 俺の思い通りになったことなんかないくせして 」
悔しさに、溜まっていた思いをぶつけたつもりだった。なのに、呆れた声で冷静に返される。
「それより、『女』ってなんだよ? 」
相手にもされていないのか、白を切るつもりなのか。
「そんなの、お前が1番よく知ってるだろっ! お前がずっと好きだった…… 」そこまで言って、言い直す。
「今でも好きな女だよっ!」
もう、我慢が出来ない。ぶわぁっと溢れてくる涙に、二海人がぎょっとしたのが分かった。
「無神経過ぎんだよ! 俺はお前の何? 俺達結婚してんだよな? 」
「まほ……? 」
「子どものために結婚したとしたって、幾ら他に好きな女が居たって、マナーってもんがあんだろ?! 」
「お前、何言って……」
「俺がどんなにお前の事好きか、知ってるくせに!! 」
「おい、まほ聞けよ 」
「やだよっ、聞きたくないっ! これ以上、そいつが好きだって言うつもり? 他のヤツが好きだって、何で俺が何回も聞かされなきゃならないの? 」
「……っ! だから、話を聞けって!」
大きくなった声に、身体が小刻みに揺れた。
長めの前髪から覗く瞳が、ギラリとした抜き身の刀の様な光を放つ。強い目力に圧倒され、漆黒の中に引き摺り込まれそうになる。
それでも嫌だとぶんぶんと顔を横に振れば、二海人に両手で頬を挟まれた。
「聞けっ! 」
「やだっ!!」
「いいから聞けよっ! 俺が好きなのは、昔も今もお前だけだ! お前しかいねぇよっ! 」
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