小鳥の憂慮、或いは月の贖罪と錯誤。そして、あらゆる劣情。

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「じゃあ、このマンションは? 」 「マンション? 」 「だって、オカシイだろ? 再会して、海音が居るから直ぐに結婚決めたまではいいとしても、こんな家族で住むような所を既に用意してるなんて 」 それに対して、二海人は忌々し気に舌打ちをした。 あまり二海人のそういう所を見たことの無かった真祝が目を(みは)ると、気付いた二海人が「俺はこういう男だよ、幻滅したか?」と苦笑した。そして、言いたくないのだろう話を、余計なことを全て省き、端的に訥々と説明する。 「まほがあの坊っちゃんと別れたと聞いて、直ぐに新築で入居出来る物件を探した。条件に合い、手頃なのがここだった。思いの外、まほを探すのに手間取って、こっちの契約のが早く済んだってだけの話だ 」 俺と海音のため。 聞いてしまえば、疑っていたのが恥ずかしくなる位、単純なことだ。けれど今度は……。 「二海人、央翔に会ったの? 」 別れたとかそんな当人同士の話、聞いたのなんか本人からに決まってる。 二海人は聞かれるのが分かっていたのか、仕方がないという風に言った。 「……会った。というか今、ウチの会社とK.Gで同じプロジェクトを進行してる 」 現在進行形で、一緒に仕事をしてるのか……。 二海人が言いたく無かった理由が分かった。マンションの話をすれば、この話をしなきゃいけなかったからだ。 「……アイツ、元気に、してる? 」 「気になるか? 」 「そりゃ…… 」 言い掛けて、真祝は二海人に1番聞かなくてはいけないことがあることを思い出す。 二海人は自分のことがずっと好きだったと言った。それなら、何故俺を央翔に差し出した?
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