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「アイツは…… 」
自分は何を言おうとしているのか。止めておけと心が警鐘を鳴らしている。
だけど、これは他の誰でもない、弱い俺が犯した決して消えはしない罪科。
「アイツは、……央翔は俺に凄く優しかったし、愛してくれたよ 」
ポツポツと彼の人を思い出しながら言った言葉は、胸の中で降り出しの雨みたいに落ちていく。
「俺をお姫様かなんかと間違ってるんじゃないかって思うくらい、大事にしてくれた 。発情期で苦しい時はずっと側に居て、自分だって番のフェロモンに当てられて辛いだろうに、俺が壊れない様に、俺の身体が必要とする分だけアイツのをくれた 」
俺が、治療以上のそれを望んでいなかったから。
知っていた、本能剥き出しの央翔に抱かれたのは、番になったあの夜だけだった。
「だから、気になるのは当然だ。俺は裏切ったとはいえ、アイツの番だから 」
ふっと、二海人が片方の口角を上げて微笑った。凍える様な冬の海、冷めた瞳に、ひゅっと喉が鳴る。なのに……。
「羨ましいな、俺には一生分からない感情だ 」
なのに、胸がこんなにゾクゾクとあまく震えるのはどうしてだ?
「二海人には分からなくて当たり前だ 」
「……あぁ、そうだな。俺には分からない、どんなに欲しくたって、努力したって、手に入らないものだ 」
「だから、俺を諦めたの? 」
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