月夜の小鳥は哀切な嘘をつく。1

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「はい……、はい、すみません。 はい…… 」 失礼しますと言い終える前に、耳元でピッと荒く電話を切られた。 いや、荒いというのは気のせいだ。 電子音はいつでも同じ音の筈だから。 そう感じたのは、2~3ヶ月に一度、突然にくる発情期の為、一週間以上も会社を休まなければならない自分に対する、相手の苛立ちと蔑みを感じたからだ。 特に何か文句を言われた訳ではない。 妙齢の、神経質な女性の上司に冷たくされるのはいつものことだ。 だけど、真祝(まほぎ)がΩ《オメガ》であることは会社も分かっていて雇っているのだし、社会的弱者であるΩ《オメガ》を雇うことによって会社にも国から幾ばくかの助成金が出ている筈だった。 「……確かに、何でこのくそ忙しい時期にとは思うけどね 」 こんな身体だから、重要な仕事など任せてもらえる訳などない。 昨今、いくら抑制剤の効力が上がってきているとはいえ、副作用もある。 ましてや、真祝には体質的にも合わず、ぐらぐらとする目眩に吐き気や頭痛まで覚えて、結局はベッドから出られなくなってしまうから。
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